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12月の4,5日と日野春へゆく。昔からの絵の仲間の集まりである。
定番は甲斐駒と八ヶ岳である。
甲斐駒と八ヶ岳の間は釜無川が流れている。
八ヶ岳側は、釜無川の流れに浸食されて、断崖の七里岩が韮崎から国界橋まで30キロに渡って続いている。
日野春に向けて20号線をとことこ走っていると、七里岩越しに八ヶ岳を眺めることになる。
川上先生の作品に七里岩がある。主役は崖なので、八ヶ岳はわずかに顔を見せているというものだったが、日野春に近づくと大きく見えてきた。
そこで、車を止めて、スケッチをしたというわけである。
そこは牛頭島公園というところだった。樹齢50から120年という赤松が120本あるそうだ。釜無川の氾濫に苦慮した農民が植えたものだと解説版にあった。
離れ犬が一匹いたのみで誰もいなかった。明るい日差しと強い風に松だけが聳え立っていた。
もう11年前になるが、伊豆大島は波浮の港から元町目指して歩いた。
大島は玄武岩の火山島である。
黒い溶岩が海岸に流れ込み、火山灰が降り積もる。が、その上にも植物は生えてくる。
人はその自然を荒らす。画面の中程に車の屋根が見えるが、岩陰にひっそりと数台捨ててあった。産廃の処理場も近くにあり、島は楽しいなとうれしく歩いていたものを暗い気持ちにさせられたのを思い出す。
ハエ(双翅)目糸角亜目しかわからず。体長0.25センチメートル。
春になると外壁によくついていた。今の時期にも成虫でいると思わなかった。しかし、蚊も未だに出てくる。
蚊と同じような習性を持っているのだろうか。とは言え、口器は吸収式でも、針にはなっていないから、吸い取るだけしかできない。
複眼の間には毛がまんべんなく生えていたから、花粉のような粉っぽいものが餌かもしれない。毛で花粉が複眼につくのを防ぐことがあるらしいので、そう思うわけだが、美しいとはいえない形を見ると、もっとえげつない生活が似合っているような虫ではある。
甲虫(鞘翅)目テントウムシ科ナミテントウというらしい。
体長0.7センチメートル。
テントウムシは葉っぱの上をうろちょろしているが、パッと飛び立つこともする。
翅は2組4枚あるが、前翅は甲羅になっていて跳ね上げるだけである。
後翅は長大だったが、翅脈は前半だけで後ろは折り曲げることにより立体化して強度を増しているが、弱々しい翅である。
とは言え翅脈が末端まであれば、折りたたむことはできない。飛ばないときには前翅の下に収納するためには合理的な作りではある。
小さい頑丈な翅を、ハエなどのように早く動かすことよりも、ゆっくり動かしても面積を広くとっているので、それなりの浮力を得られる。そういう道を選んだのだろうなどと考えた。当たっているだろうか。
ハエ(双翅)目短角亜目ハナアブ科ヒラタアブ亜科ホソヒラタアブというらしい。体長1.2センチメートル。腹部が黄色に黒帯で目立つ虫である。
ハエ目は昆虫の仲間では一番新しいものらしい。もっとも、そこからまた進化してくるので、ハエ目といってもいろいろいるわけだ。
ケバエとかガガンボとかはのんびり動いているものは原始的、いわゆるハエとかカとかは機敏な動きをするので先端のもののような気がする。
ハナアブもすばやいし、ホバリングもできる。しかし、体のつくりを見ると、腹部が細長く、いわゆるハエの丸まったものに比べると、なにかのんびりとした感じがするし、幼虫は汚水の有機物、朽ち木、植物の根で成長するものやアブラムシを食べるものなど変化に富んでいるらしいので、進化の果ての虫というより、長い年月をあれこれ変化を重ねて、それぞれが生き残ってきた種類のようにも思える。
などと勝手なことを楽しく想像するのも昆虫のスケッチをしたおかげであるのだ。
ハエ(双翅)目短角亜目ハナアブ科ヒラタアブ亜科クロヒラタアブというらしい。体長1.4センチメートル。
一昨日は暖かかった。玄関先の植え込みにハナアブが7,8匹群がっていた。以前であれば、卵や幼虫あるいは蛹で越冬するものだとばかり思っていたので、びっくりものだが。今は、成虫でも越冬するのが分かっていたので驚かないのだ。
自分はものをしっかり見ないと絵は描けない。想像を交えるとなにか嘘くさくなる。昆虫も生きたままスケッチしたいが動き回るので難しい。いきおい、死んだものを描くことになってしまうのだが、今回は小口径の試験管に仕切りを作ってそのなかにハナアブを閉じ込め、実体顕微鏡で観察しながら描いた。
むろん絵のようにじっとしてくれないので、正確度はかなり落ちる。そのかわり生き生き感は増しているのでないかと思う。どうだろうか。
隗展の写生会は、昼過ぎに宿に着いたのだが、この日は天気が悪くなり、今にも降りそうな気配になった。
降られてもいいように宿の近くでスケッチすることにした。
唐松林の中であるが、畑に接しているところに松が生えていたが、どういうわけか、枝が片方に偏っていた。
唐松に邪魔されて枝を伸ばすことができず、開けた畑方向だけに伸びたのだろうか。
形もおもしろく小さなスケッチブックに鉛筆で短時間に勢いで描いているうちに、周囲はガス状となり雨が降り出す。木の下なので雨はしばらくは防げたが
あきらめて戻る。
メンバーの中には、しぶとく夕暮れまで粘っている人もいた。傘を差して描いたのだそうだ。まったく、頭が下がる。
隗展の仲間と信州に写生旅行をした。唐松の色が印象的であったが、人の姿をほとんど見ない、静かなたたずまいであった。
午前中から午後の早い時間は鉛筆で形をとり、午後は色をつける。
なにか違うような気がしながら彩色したが、翌日、同じ場所に立ち、木の幹が白く光っているのを見た。午後は日が回り込み黒く沈み込んでいたのだ。
写生では、このようなことはよく起こる。描いているときは夢中になって目前の形と色を追いかけているわけだ。
この絵の上に、午前中の明るい色をかけようと思ったが、仲間は水彩の達人ばかりだが、自分はとんと不得手である。ぐちゃぐちゃにしてしまいそうだったので、あきらめて次の絵を描き始めた。
バッタ(直翅)目イナゴ科ツチイナゴで間違いないだろう。
体長4センチメートル。大きなものである。9月15日に近くの草むらにいた。目の高さのところで日向ぼっこをしていたのが運の尽きであった。ネットで調べると、成虫で越冬するイナゴはこれだけだそうだ。目の下に筋があるが、バッタが出始めの頃には、目の下に筋のある小さな幼虫をよく見た。色は緑黄で、成虫の土色とは異なる。賢くも季節の草の色の変化に適応している昆虫なのだった。
田舎の電車はのんきなものである。ベンチシートに長々と横になりしっかり寝るなどという芸当ができるのだ。さすがにこれを見たときはびっくり仰天大たまげだった。しかし、この絵を改めてみると、気持ちよさそうに寝ているものだと感心してしまったのだ。
早朝の電車は、まばらにしか乗客はいない。たまたまボックス席に座ると爆睡している人がいた。完璧に寝ているので実に安心してスケッチがとれる。しかし、残念ながら表情は見えないので髪の毛を丁寧に描いたのだ。
これも昔のスケッチであるが、電車の中ではよく人は寝ている。寝ている人を描くのは利点がいくつかある。まず動かない。描いてる途中で動かれるとそこで終わりになってしまうが、寝ていると完成する確率が高い。次に気付かれない。そして、ポーズがさまざまで変化に富んでいる。快適にスケッチできる訳だ。
今は昔となってしまったが、長時間の電車通勤をしていた。小田原近くなると空いてくる。隠し撮りならぬ盗み描きで、手帳を取り出し乗客のスケッチなどをしていた。短時間勝負である。気付かれるとアウトで続けられない。気合いで描くようなものだった。今でも電車に乗ったときは描きたくなるが、昨今のプライバシーにうるさい世ではままならない。
上の珪藻は、クサビケイソウ(ゴンフォネマ)属で大きさは40×10マイクロメートル
下の珪藻は、クチビルケイソウ (キンベラ)属で大きさは50×15マイクロメートル
この大きさの珪藻の胞紋の撮影は私の腕では難しいのだが上手くできた。特に上のは、つるつるした表面に胞紋が並んでいるのが実感できて嬉しいのだ。
(オリンパスBH-2、対物レンズ100X、油浸)
アミメカゲロウ(脈翅)目ラクダムシ科ラクダムシというらしい。脈翅目は最初に完全変態になった昆虫で、変態の研究には大事な目だそうだ。
体長2センチメートル。面妖な虫である。フラフラーと飛んで、はかない感じであったが、拡大したらギョロ目に、鋭い大あごで凶暴な感じがした。幼虫は、松などの樹皮下で他の幼虫を食べているそうだ。成虫は花粉やら昆虫を食べているらしいがよく分かってはいないらしい。顔つきからすれば、絶対肉食である。
カマキリ目カマキリ科ハラヒロカマキリで間違いないだろう。
体長4センチメートル。獲物を求めて我が家の鉢植えにきたのが運の尽きであった。勇ましく鎌を持ち上げて威嚇しても無駄な抵抗で、私のモデルになってしまったのだ。
カマキリは変態しないので、子供はちびでかわいらしいものだが、成虫になると迫力がある。前胸が長く、頭も自由に動き、鎌を有効に動かして攻撃力も大きいようだが、体は柔らかく、防護力はあまりないと思う。体の大きさで補っているのかもしれない。などど考えてみたのだ。
原生動物繊毛虫門ブレファリスマ属というらしい。体長100マイクロメートル。
メダカを飼っている水槽から水草の切れ端をシャーレに採ってきて、米のとぎ汁を加え、しばらく放置した。プランクトンを培養しようというわけだ。
一滴を観察するのだが、小型のものは、うじゃうじゃというくらい増えた。100マイクロメートル程度のものはグンと少なくなるが、それでも、左のものは五匹ぐらいいた。
単細胞だそうだが、口の周りの繊毛が長くてよく動いているのが分かる。色も薄いピンクでわかりやすい。
真ん中の画像はデジカメの写真だが、体をひねったり直進したりなかなか動きが速い。撮るのはなかなか難しい。動きを止める工夫が必要だ。
下段の2枚はデジカメの動画で撮ったもの。画面で動いているのを見る分には結構見れるが、640×480ピクセルしかないので静止画にすると粗い画像になるのは残念だ。
(オリンパスBH-2、対物レンズ40X)
節足動物門カイアシ亜綱ケンミジンコである。
体長0.7ミリメートル。肉眼でもほとんど透明なものが動いているのが分かるが、種の特定は専門家でないと無理らしい。
顕微鏡で観察すると、照明の違いで印象ががらりと変わる。
通常は、観察者の目←接眼レンズ←対物レンズ←検体←コンデンサ←光源となり、透過光で検体を観察する。一番上の明視野のものがそうである。
つぎに、理屈も分からないので説明できないが、コンデンサのところであれこれいじくり、検体に当たっている下からの光を、ねじ曲げて真横からだけにしまうやり方がある。背景が真っ暗になり、検体は光り輝いて綺麗なものである。明視野にたいして暗視野というのだそうだ。
人は反射光でものを見ているので、以上の方法は顕微鏡独自の世界である。しかし、今はLEDという小さくて強力な光源があるので、反射光でも観察できる。顕微鏡の光源は消して、LEDライトを検体の斜め上から当てるのである。
巨大化したケンミジンコはこのように見えるというわけだ。
(オリンパスBH-2、対物レンズ10X)
ハエ(双翅)目短角亜目クロバエ科ツマグロキンバエ亜科ツマグロキンバエというらしい。
体長0.7センチメートル。小さな花に蜜を吸いにきていた。目を凝らしてみると口器が長く伸びていた。絵に描いたよりも倍ぐらいの長さだった。黒っぽい地味な虫に見えたが、実体顕微鏡で見ると実にカラフルだった。肉眼だと色が混ざって鈍い色に変わってしまうのだ。
写真はこちら。
ハエ(双翅)目短角亜目ムシヒキアブ科アオメアブ亜科アオメアブで間違いないだろう。
体長3センチメートル。緑と金色に光り輝く複眼が美しい。口器は吸収式。大型のハンターで他の昆虫を捕まえ体液を吸うそうだ。この絵では分からないが、胸部の前後に大きめの気門があった。翅を動かす筋肉に酸素を強力に送り込める。ハンターなのを実感したのだ。
ハチ(膜翅)目細腰亜目スズメバチ科アシナガバチ亜科キボシアシナガバチのようだ。
体長1.6センチメートル。スズメバチは3センチはあるから、それに比べればだいぶ小さい。目視では黒っぽくて地味なハチだと思った。しかし、実体顕微鏡で見ると意外に色があった。スケッチしてみて、スズメバチ科の形は引き締まっているし、翅は4枚あるが、飛ばないときは前翅は二つに折りたたみ、後翅とぴったり重なってコンパクトに収納されている。脚も長くがっちりしている、いかにもハンターであると実感したのだ。
ハエ(双翅)目糸角亜目カ科ヒトスジシマカの雌と思う。
前回と違って、腕に止まったのを叩いたので、鱗粉がかなり落ちてしまった。白黒模様なのだが、それは鱗粉の色で地は結構明るい色であった。
鱗粉がとれたので、表皮の様子を見てみたが、細かい毛がびっしり生えていた。毛の二重構造だがどんな意味があるのだろうか。
ハエ(双翅)目糸角亜目カ科ヒトスジシマカと思う。
上から、ボーフラ、鬼ボーフラ、成虫である。
窓際に水鉢の水を入れたビーカーを置いている。藻類や原生動物、微生物がいるわけだ。ここに、にっくき蚊が産卵してボーフラが沸いてくるという算段である。
幼虫、さなぎ、成虫とそろったのでスケッチしてみた。
古いシマズの実体顕微鏡で対物レンズ2倍、接眼レンズ20倍で40倍になる。直径6mmの範囲が画面の丸のように見えるのだ。
ボーフラはスポイトで吸い取って、へこみのあるスライドグラスにたらして観察した。動き回って、口をぱくぱくさせ、糞を盛んに出した。餌を食べて排泄していたのだろうが、水は水道水に入れ替えていたので、真水をとりこんで体がきれいになった。尾の吸管からの気管が2本、頭まで伸びているのがわかった。この絵では分からないが、口器は細かい櫛のようになっていて、水を吸い込んで小さな生き物を食べているようだ。
鬼ボーフラは2本の角が呼吸器管で先端を水面に出して呼吸するそうだ。さなぎのくせに活発に泳ぎ回っている。
成虫は雄である。人の血を吸いにくるのは雌だから雄はなかなかみれない。触覚に長い毛がたくさんあるのと、口吻の上部分を小あご枝と言うらしいが、これが長くて口吻の先まである。
並べてみると幼虫は成虫よりも大きい。成虫は成長する必要はなく、子孫を残すために配偶者を早く見つけ、さっさと産卵するのが使命のような気がしてきた。コクゾウムシの本を読んでいたとき、成虫になってから餌を採らない種がいるのがわかってびっくりしたが、昆虫は幼虫の時期が一番大事なのだろう。
カシミール3Dの二回目。
地球温暖化で海水面が上昇したらどうなるかシミュレーションしてみた。60mあたりを赤で、そこから100mまでを土色にしてある。
60mまで海水面が上昇したら水色のところが水没するわけだ。関東平野や濃尾平野など平野は皆海の中である。被害甚大であるが、それから先は100mまで海水面が上昇してもたいして被害が増えないことも分かる。
それにしても日本は山国である。2000m級が本州の中央にどんと控えている。
顕微鏡は抽象絵画の世界も作り出してくれる。
オリンパスBH-2、対物レンズ40X、暗視野で撮影。明暗とコントラストはいじっているが、変形、変色等の画像処理は行っていない。種明かしはなし。
メダカと水草、水藻を入れている水鉢から採ってきた珪藻である。MWSのプレパラートと違って鉱物の欠片がたくさん入っているし、珪藻も数えるほどもなかった。とは言え、自家製なのが嬉しいのだ。
この珪藻は長さ100マイクロメートル、幅16マイクロメートル。ピンヌラリア ビリディス(ハネケイソウ属)というらしい。顕微鏡はオリンパスBH-2、対物レンズ40X、暗視野での撮影である。
カシミール3Dというフリーソフトがある。
地形図を見るのは楽しいものだが、このソフトでは立体化することができる。変わった使い方では、標高に自分流の色分けをしてもよい。
標高20mから1000mを際立たせるためにピンクからオレンジで色づけしてみた。相模太郎は富士の裾野の水を運んでいるのが実感できるのだ。
ハエ(双翅)目ムシヒキアブ科アオメアブらしい。
体長3センチメートル、庭に出ていたら目の前に止まった。「あっムシヒキアブだ。」全身橙黄色と黒の毛だらけで、目は緑色に光っている。そっと取り出し、さっとかぶせたプラケースに入ってくれたのだ。おおラッキー。
大型で他の昆虫を補足し体液を吸うというのだから怖いものなしなのかもしらん。人間に平気で近づいてきたのだから。
ハチ(膜翅)目アリ科フタフシアリ亜科シリアゲアリ属ハシブトシリアゲアリかテラニシシリアゲアリらしい。
体長0.3センチメートル、しだれ桜にいたものを捕まえる。肉眼では、丸い頭と三角のつやのある黒い尻が目立つごく小さいアリだ。地面を匍っているのがアリだと思っていたが、木だとか花だとかにも結構いる。天地は関係なく動き回るのだから、昆虫の脚は優れものだ。
甲虫(鞘翅)目コガネムシ科スジコガネ亜科マメコガネだろう。繁殖力が強く大害虫とあった。
体長1センチメートル、コガネムシ類が平らな道などを歩いている時は、いつもせかせかと急いでいる。附節がブラブラしている感じで頼りない歩き方である。それが飛行して花に止まると、附節の先の爪を上手に引っ掛けて自在に花を動き回る。脚の形もいろいろあるが、動き方もさまざまだということだろう。
甲虫(鞘翅)目ゾウムシ科クチブトゾウムシ亜科ヒメシロコブゾウムシらしい。
体長1.4センチメートル、ゾウムシは力強い。素手で捕まえると、脚に力が入って、とっても手応えがある。白に黒の斑点と鼻の伸びた姿も愛嬌があって愛らしい感じがした。とはいえ、体はごつごつと凹凸が多くて美しくはない。
カメムシ(半翅)目ヘリカメムシ科オオツマキヘリカメムシ、またはツマキヘリカメムシらしい。
体長1センチメートル、色は茶色、表皮はブツブツしていて少しも美しくない。植物の汁が食べ物だそうだ。自分が餌にされてしまう昆虫である。進化の程度の低いのは、どうも餌になる運命のものが多そうだが、食べられても食べられても、数が多ければ子孫は残せる。ネットで検索したら、群れになっている写真が幾つかあった。
甲虫(鞘翅)目しか分からない。カミキリかカミキリモドキではないかと思うが不明。
体長1.1センチメートル、小さいものだ。茶色の体に白い帯模様があって目立つ。全体に毛深くて、模様と見えたものは、毛の色違いであった。
甲虫(鞘翅)目オサムシ亜目オサムシ科オサムシ亜科アオオサムシで間違いないだろう。
体長3センチメートル。大きくて見栄えがする。普段は茂みの中にいるのだろうが、ときどき、道に出てくる。大急ぎで走っているので、露わになっているのに危険を感じているのかもしれない。
心に残る作品
絵は難しいとつくづく感じる。
素直な気持ちで楽しく描いていればよかったものを、空っぽの頭で小難しく考えたせいだ。
そんな気持ちで職美展の搬入をしたが、飾り付けのところで、山崎さんに久しぶりに会った。彼女とは、毎年の作品を見るだけの付き合いであるが、昔から気になる人であった。
若い頃は、流れるような線と色彩で、なんでもない下町の景色などを描いていた。そのうちに、糸、布、枯葉、枯木などを使った抽象作品になった。いずれも、身近なものを使いながら、物事の本質に迫ろうという意気込みを感じさせるものだった。
彼女は「このごろ素描の大事さを思う。それで昔の作品だが、素描を出品した。」と言った。見ると、女性の半身の二枚の絵があった。いずれもモノクロームの線を主体とした力強いものであった。短時間で一気に描き上げたものだろうが、集中度が高いのだろう。見ていて引き込まれる思いがした。
あれこれ悩ましい思いに囚われずひたすら対象に迫る姿勢を感じ、絵ってそういうものが大事だよなとあらためて思った。
甲虫(鞘翅)目オサムシ亜目オサムシ科マルガタゴミムシ亜科マルガタゴミムシと言うらしい。
体長1センチメートル。色は黒いが、平べったい小豆状のものが、ちょこまかと動き回っていた。御用にして実体顕微鏡でのぞくと、頭、胸、腹、脚と、それぞれはっきり見分けられ、意外に複雑なのねと言うわけだ。
甲虫(鞘翅)目ゴミムシダマシ上科カミキリモドキ科ナガカミキリモドキ亜科アオカミキリモドキと言うらしい。
体長1.5センチメートル。朝の食事中に飛び込んできて、掃き出しのガラスに止まった。
あえなく標本になってしまったわけだ。
おおあごをみると鋭いので肉食かと思ったら、花粉食とあった。意外である。
体がオレンジ色なのは、外骨格が柔らかくて薄いのだろう、透けて内部の色がてでいるみたいである。そのかわり、カンタジリンという毒物をふくんでおり、触るとかぶれるそうだ。
こいつは、ハラアシワムシと言うらしい。
動物プランクトンで、多細胞。光合成をしないので、なにかを捕食するというわけだ。
まっすぐに泳いでいたので、鯨のように大口を開けて流し込んでいるのだろうか。などと考えた。
水鉢の藻には、珪藻だけでなく他の生き物もいる。
こいつは、細長い足を藻に引っ掛けて、体をあちこち動かして餌を採っていた。
けっこう忙しく動かしていて、淀んだ水の中は実は騒々しい世界なのだ。
水鉢にメダカを飼っている。藻が生えて緑色になっている。
少しつまんできた。藻はサヤミドロと言うらしい。何本も固まっているので分かるが、一本だと見落としてしまうぐらい細い。髪の毛の細さも問題にならないくらいだ。
顕微鏡でのぞくと竹のように節がある。細胞が連なっているのだろう。そこに、珪藻が群がっていた。
じっと動かないが、たまに身を翻えす奴がいて、台形が舟形になったりする。見ていて妙な気分になるが、横から見ると台形、上からだと舟型なのだ。
茶色の帯は葉緑体だそうだ。葉緑体イコール緑などと思っていたが、いくつか種類があるそうだ。
甲虫(鞘翅)目ゴミムシダマシ科キマワリ亜科キマワリと言うらしい。
体長2センチメートル。つやつやした黒のかわいらしいムシである。
きのこや朽ち木を食べているそうだ。平和なムシは穏やかな感じがする。ハエとは大違いだ。
ハエ(双翅)目の3態である。
左は色金属光沢のコバルト色で、普通のハエの大きさと形である。翅は省略した。
右2つは6ミリぐらいの小バエである。
小バエはあまり感じないが、普通のハエは、頭、胸、腹と引き締まっており、外骨格は薄くて強く、動きもスムースなようだ。
見るたびに進化の果ての無駄のない生き物のように思う。素人の無責任な感想であるが、当たっているだろうか。
甲虫(鞘翅)目カブトムシ亜目コガネムシ科スジコガネ亜科アオドウガネと言うらしい。
まだ時期ではないが夏にはよく見る。
体長2センチメートルで金属光沢の緑色で、クワガタやカブトムシの華やかさはないが、目立つ虫である。
ハエ(双翅)目糸角亜目ケバエ科ハグロケバエと言うらしい。
体長1.6センチメートル、5日のヒメセアカケバエと同類であろう。
感じが違うのは、死体を描いているからである。口器が飛び出し、腹部がへっこみ、脚がてんでな方向を向いている。
ハエ(双翅)目糸角亜目ケバエ科ヒメセアカケバエと言うらしい。
体長1.1センチメートル、ちつともハエらしくないが、原始的なハエらしい。
フラフラと飛んで、いかにも頼りない。ネットでは結構写真があった。幼虫は枯葉を食べて一斉に羽化するので、群れをなしているのをよく見かけるなどとあった。
進化のはじめ頃の虫は弱く、たくさん子供を作り生き延びようとするのだろう。などど考えた。
背中の赤いのは、外骨格が透明で内部の色が出ているのが顕微鏡で見てわかった。
甲虫(鞘翅)目オサムシ亜目オサムシ科オサムシ亜科マイマイカブリと言うらしい。
長い首をカタツムリに突っ込んで食べるので、マイマイカブリなのだそうである。
体長4.5センチメートル、大型のものを見ると、甲虫とはよく言ったものだ。
コチンコチンの外骨格は鎧のように感じられる。
脚をぐるぐる動かしても柔らかい内部は少しも出てこない。完璧にガードされているのだ。
甲虫(鞘翅)目カブトムシ亜目コガネムシ上科クワガタムシ科クワガタムシ亜科コクワガタと言うらしい。
体長3センチメートル、この種としては小さくて大あごはかわいらしいが、大型は大きくて迫力があるらしい。
甲虫(鞘翅)目カブトムシ亜目コガネムシ上科クワガタムシ科クワガタムシ亜科ノコギリクワガタと言うらしい。
体長5センチメートル、この種としては中ぐらいの大きさだそうだ。
「ちょっとまちねえ。
おめえどっかでみたなぁ。」
「そういや〜
おいらもみおぼえがあらぁな」
「このいしもどっかでみてねえかぁ」
「ちげぇねえ」
「らくしてやがぁらぁ」
「へへへ」
アブラムシは、頭でっかちのチッコイ奴から脱皮を繰り返してだんだん大きくなってくる。
脱皮したては色がついてないようだが、赤やら緑やら灰色やら黒やら、種類によっていろいろあるようだ。
色の違うのが一緒に居たりしている。種の区別がつかないので確かではないが、同じ種だと思う。
同じ種類でも、色ちがいがあるみたいである。
アブラムシは、不完全変態なので進化の程度は低い。
探す気になるとすぐに見つかる。大変に栄えているようだ。
栄えるために進化するのだろうが、取り残されても、栄えるのには支障がないのであった。
旧態依然にもいいところはあるのだ・・・と思った。
アブラムシはどこにでもいる。
あまりにも小さくて、気がつかないだけである。
気がつくのは、草のてっぺんに大量についている時である。
赤いのや、黒いのが、びっしり張りついているのは、気持ち悪る〜となる。
このアブラムシは、翅の模様が太い黒線になっているのが特徴的で、ネギアブラムシと言うらしい。
玄関の鉢植えの葉裏に一匹で居た。
翅はあるが、まず飛ばない。ゆっくり動き実にのんびりしたもので、葉っぱをちぎって、そのまま顕鏡できた。葉から離れると意外に早く動くが、千切った葉でも自然にあるがままと思うのか、葉液を吸い始めたりもする。
写真とスケッチを並べると、自分の腕が分かってしまうが、絵は難しいのだ。
土手のすかんぽ ジャワ更紗
昼は蛍が ねんねする
僕ら小学 尋常科
今朝も通って またもどる
すかんぽ すかんぽ 川のふち
夏が来た来た ド レ ミ ファ ソ
北原白秋の「酸模の咲く頃」には、まだ大部早いが、道端には蕾をつけたものがちらほら見える。
朝の散歩で、頭のところをチョイト千切ってきた。
よーく見て見ると、黒いものが見える。翅もあるようだ。
黒くて見栄えはしないが、アブラムシの有翅成虫だった。
珪藻は単細胞なので、増殖する時は細胞分裂をするそうだ。
外殻はガラス質の弁当箱のようなものだが、細胞の中身が分裂した後に、新しく弁当箱の底が二つできる。
この2ケの底と、今まであった蓋と底が組み合わさって、二つの珪藻が出来上がるわけだ。
ところが、古い底が蓋に変わったものは、より小さい新しい底がつくために、大きさが小さくなってしまう。
分裂するごとに小さいのが、どんどん増えていくことになるのだ。
ほんとかしらんと、MWSの珪藻プレパラートで、計測をしてみた。
デジカメで撮影して、画像をCADで測定し、結果をエクセルでグラフ化した。そのグラフと測定例をひだりに載せてあるのだ。
測定した4種類とも、縦横比が良く揃った、纏まった大きさの集団になった。
これだけでは、分裂の結果とは言えないと思うが、最大長さの65〜85パーセントの大きさになると、分裂は止むようである。
分裂を続けていくと、無限に小さくなってしまうが、そうならないのは、有性生殖もするのだそうだ、大きさのリセットである。生命の神秘はこんな小さな命にもあるのだと感心してしまった。
内外を連絡するためだと思うが、外殻には、胞紋という穴が規則正しく並んでいる。画像で横筋が見えるが、これは、胞紋の並んだもので、珪藻の種類によって間隔が一定しているのだそうだ。
なるほど、測定の結果は、フルスツリアで14〜15本/10μm、キンベラで10本/10μmになり、安定した間隔であったのだ。
甲虫目(鞘翅目)カブトムシ亜目
テントウムシ科
クチビルテントウムシ亜科
ヒメアカホシテントウである。
黒い体に赤星2つだから、間違い無いだろう。
体長3.5から5mm程度で、カイガラムシを食べるそうだ。肉食である。
今回は絵ではなく、口器と腹部の気管?の写真を見てもらおう。
NO.1の枠で囲ったのが、下から見た口器であるが、これが口だとは、動くところを見ないと、実感はわかないのではないだろうか。
武器になる堅く尖った大あごは、この写真ではよくわからない。中央上の皿状の下が濃い茶になっているのがそうで、弓形に細く鋭い形で、カイガラムシをぶすりと突き刺せそうであった。
その下の房は、小あごひげ、下唇ひげなどである。
カイガラムシを下唇とひげで押え込んで、大あごでぶすりだろうが、その後はどうするのだろう。細かくして飲み込むのが普通だとも思うが、大あごの鋭さを見ると、傷つけて体液を吸うとも思える。素人の悲しさで、これ以上はなかなかわからないのだ。
NO.2は腹節の接続部がオレンジになっていたので、よく見たら、外骨格が透明になっていて、内部が見えていた。
昆虫は人間と違って血液で酸素を運ばないそうだ。そのかわり、気門から空気を取り入れ、気管を全身に張り巡らして、空気から直接酸素を取り入れるのだそうだ。
効率が良く、強力で素早い動きができるらしいが、反面、大きさの制限がきついらしい。昆虫はすべて小さいが、外骨格と気管の影響で、大きくなれないそうだ。
昆虫の体は、なかなか複雑である。
拡大して見ても、なかなか理解できない。
という訳で、蟻の頭を解剖して見た。
外骨格が丈夫なのがわかった。なかなか割れてくれなくて、思うようには奇麗に解剖できなかった。道具と腕がないといけないということだろう。
口器に腕がいくつもあるのは変な感じではあるが、昆虫の特色だそうだ。
大あごで、くわえたり噛み切ったりして、小あごひげと下唇ひげで掻き込むというわけだ。
前回に採集した昆虫は、目に入るか入らないかのようなものもあった。
水に浮かんでいた黒い点、二個を掬い上げたのと、鉢のへりに居たのが同じ虫で、今回取り上げた奴である。
肉眼では黒い細長い点に白い物がついている程度しか分からないが、実体顕微鏡で見ると、胸部の後ろ側が二つに割れていたし、後翅もあるので、甲虫目にちがいない。
しかし、変な虫ではある。普通の甲虫は腹部まで固い前翅で被われていて、後翅もすっぽり納まっているが、こいつは、中途半端である。
後翅を自由に動かせるので飛翔力は十分だが、全身は中半端な甲羅で防備は不十分。甲虫としては、進化の程度が低いのか、などと考えてしまった。
ついでに、巨大化してのそのそ歩いているところを、想像してみた。
9日は2月というのに異様に暖かかった。しかも強風が吹いていた。
夕方の散歩から帰ると、玄関先の水鉢に小さな物が動いたのが見えた。
水に落ちて動けなくなっているのも居た。
さっそく、入れ物を持ってきて採集である。水に溺れていても死んではいなかった。
今年始めての標本である。とはいえ、4mmしかない。
生きているのをスケッチするのは、4mmではお手上げである。下の白黒の2点は、思い出して描いた。翅を畳んでせわしなく歩き回っていたのである。
死んでしまうと、腹がぺちゃんこになるなど、ちぢんでしまうので、今回は、バルサ材に小さな穴を開けて、標本をいれ、カバーグラスで蓋をした。ゆっくりと乾燥するに違いない。
2日たっても腹ペチャにならなかった。しかし、翅が上に開いたり、脚が変に曲がってしまったり、生きている時の姿とはほど遠い。
甲虫目(鞘翅目)ハンミョウ科ハンミョウ亜科ナミハンミョウである。
金属光沢の派手派手しい虫なので、間違いはないだろう。
斑猫と書き、獰猛なハンターらしい。蟻とか、ミミズ、蝶の幼虫などを食べているそうだ。
確かに、大あごは大きくて鋭く、根元に三つの爪もついている。
挟まれたら一巻の終わりだ。
脚は細くて長く、いかにも、早く走れそうだ。
そっと忍び寄るなどはせず、派手な恰好で脱兎のごとく走り寄り、あっという間に捕まえてしまうのだろうか。
フィールドノートもどきの2回目である。
ある程度大きさがある虫は、肉眼でも、細部の詳細は無理でも、それなりに描くことができる。
しかも、そうやって描いたほうが、顕微鏡で細部を確認してしっかり描きこんだものより、生き生きしているようだ。
絵を批評されてがっくりくるものに、一生懸命にやったものと、お気楽にやったものを並べると、お気楽のほうの評価が高いことがある。それも、しばしばある。そのたびに、またかとがっくりを繰り返すことになる。
ああ、いつになったら逆の評価になるのだろうか。
昆虫を捕まえたら記録しておかないと、なにがなんだか分からんようになる。
それで、帰ってきてから、A4サイズのコピー用紙に、書付けるようになった。
フィールドノートのようなものだが、文字はオリジナルは手書きである。パソコンは簡単に消したり付け加えたりできるので、便利であるが、オリジナルの見分けはほとんど不可能である。怪しい世界なのだ。
上のハエのことは、すっかり忘れていた。
どこから来たのか、腹ペチャのものなんか見たことがなかったし、不思議に思ったのを思い出した。
それで、たいてい、下の程度にしか描かないが、丁寧に描いたとみえる。
妻がメダカを飼っていて、卵が孵ったが、そのままにしていると食べられてしまうので、小さな鉢に入れて大きくしていた。
しばらくすると、水際が緑の帯になってきた。
その緑のものを取って顕微鏡で覗いたのが、左の写真である。
緑の正体は、サヤミドロというらしい。緑藻の仲間で、光合成をする。酸素が供給される訳だ。
そのまわりには、動物性プランクトンがいた。ちょこまかと活発に動いている。
イタチムシというらしい。0.1ミリもないような小さな物で肉眼では分からない。
水道水に稚魚を移し変えたのだが、どっから来たのだろう。微生物というものは神出鬼没である。
ところで、通常生物顕微鏡は下からの透過照明で見ている。上の写真のように、立体感はない。
それが、横からの光を当てると、立体感が出て来る。
印象が、がらりと変わるのだ。
双翅目は、ハエ、アブ、カなどからなっている。絵にしたものは、ネットで調べたが、分からずじまい。
翅が2枚なので、双翅目は間違いがない。2センチ近くあって、ハエとしたら大きい。アブは大きいのもいるので、アブで探したが、似たものはなかった。
この仲間の進化程度は、昆虫では一番らしい。
目立つのは、
@ 複眼が巨大で、かつ、複眼のひとつ、ひとつが小さくて、数が多い。よって、視覚が勝れているに違いない。
A 触角は短いが、根元に袋状のものがある。よって、臭覚に敏感に違いない。
B 翅は2枚だけで、後翅は棍棒状に小さくなっていて、バランスを取っている。よって、自由自在に飛行できるに違いない。
獲物や配偶者を見つける能力が高く、素早く飛び回れるので、餌の確保や、敵の攻撃にも強く、生きのびる力が強い。などと、勝手に想像してみたが、あたっているのだろうか。
しかし、ハエやカ、アブは嫌われものではあるが。
MWSの作成した珪藻プレパラートから、今回は対物レンズの違いをお見せしよう。
倍率は、接眼レンズが10倍で、対物レンズが40Xだと400倍、100Xで1000倍になる。
見える範囲は、私のもっている顕微鏡では、40Xで直径0.5ミリ、100Xで直径0.2ミリである。
40Xと100Xの違いは、倍率で2.5倍にしかすぎないが、細部を見分ける力は、桁違いである。
写真は、長さが0.1ミリメートル程度の、フナガタ珪藻と、ヒシガタ珪藻などである。
40Xでは、広い範囲が見え、密に封入された珪藻が、にぎやかで楽しいが、細部の詳細は、条線が目につく程度であ。
しかし、100Xで見た、フナガタ珪藻は、ひとつひとつの胞紋が見分けられるし、ヒシガタ珪藻は、縦だけでなく横方向にも条線があることがわかる。
100Xの世界は、別世界のようである。
我が恩師の、川上尉平先生が千葉館山の洲の崎で描いた作品である。
日付がないが、晩年の作品だと思う。
先生は、徹底した現場主義であった。この絵も、冬の寒風吹きすさぶ中にキャンバスを立てて描かれたに違いない。
夕方近くの鮮やかな光に、富士の峰はほのかに赤く、強風に波頭が立ち、雲が飛んでいく。まるで、自分がその場に立ち尽くしているようだ。
先生が亡くなられて30年近くなり、油絵の実物は見れないものとあきらめていたが、2007年1,2月に熊本現代美術館で、纏まった展示があり、先生の代表作を沢山見れた。
それから、しばらくして、先生の10号が手に入った。
若い私は生意気だった。先生の絵は古臭いと思っていた。自然をありのままに描いてどうするんだと思っていた。
しかし、今、実物を見て思う。先生の絵は不思議な絵だ。離れて見ると、リアルな写生画だが、近寄ると、分厚いタッチだけになってしまう。画集では絶対に分からないのだ。
「尉さんは、芯から絵が好きだった。彼の作品に見るマチエールには、執拗なまでの対象への追求がある。存在との対話が重く塗り込められている。純白なキャンバスに重ね置かれる色彩こそ、寡黙な彼のモノローグで、頑なまでの情念なのだ。川上尉平こそ真の肥後モッコスであり、独り黙って酒を呑む姿こそ、彼に相応しい構図はあるまい。」
(川上尉平画集記載尾竹親氏の文より)
念ずれば通ず。今、先生の作品を手元に置き、日々見ることができるのは、幸運としか言いようがない。
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